2006年8月,プラハで開催された国際天文学連合 (International Astronomical Union, IAU) 第26回総会において,「惑星」の定義に関する決議が採択された.それまで惑星の明確な定義は存在せず,水星から冥王星までの9つとされていた.ところが,1992年以降,太陽系の外縁部に数多くのエッジワース・カイパーベルト天体 (Edgeworth-Kuiper Belt object, EKBO) ,あるいはトランス・ネプチュニアン天体 (trans-Neptunian object, TNO) と呼ばれる天体が発見され,冥王星も,これらの天体群のひとつであることがはっきりしてきた.さらに2005年には,冥王星よりも大きな天体,2003 UB313 (Eris) が存在することも明らかになった.惑星よりも大きな (旧来の分類上での) 小惑星が出現してしまったわけである.
国際天文学連合では,それ以前から内々に惑星の定義案の検討を始めており,第3部会 (Division III) でまとめた3つの案をもとに,天文学者で教育や歴史,広報等に通じた科学者とジャーナリスト7人からなる「惑星の定義委員会」 (Planet Definition Committee) を立ち上げ,原案をまとめた.この案は,国際天文学連合総会会期中に会員に示され,第3部会および全体会議で,幅広く議論を行いながら,改定案を練り上げていった.最終的には,大多数の会員が了解する見込みがたった決議案5A,これに一言だけ修正を加えることで,定義委員会の原案に近づける決議修正案5B,また冥王星を代表とするdwarf planetの一群を新しいカテゴリーとする決議案6A,その名前をプルトニアン天体 (plutonian object) とする決議案6Bを作成し,総会に提案した.その結果,5A,6Aが可決,5B,6Bが否決され,太陽系の惑星は海王星までの8つとなったのである.今後,新しいカテゴリーの名前や日本語訳も検討がすすめられる予定である.
【渡部潤一】
(決議前文省略)
国際天文学連合はここに,我々の太陽系に属する惑星及びその他の天体に対して,衛星を除き,以下の3つの明確な種別を定義する:
国際天文学連合はさらに以下のように決議する:
冥王星は上記の定義によってdwarf planetであり,trans-Neptunian objectの新しい種族の典型例として認められる.
注) TNOおよびEKBOは「太陽系外縁天体」,dwarf planetは「準惑星」,small solar system bodies は「太陽系小天体」,決議6Aの新しい種族は「冥王星型天体」という和名を使うことが推奨されている.
暦象年表2008より