貴重資料展示室
第19回常設展示:1998年5月6日〜1998年10月24日
測量と天文
江戸時代初期、幕府は諸大名に命じて自領の地図である国絵図を作らせた。ここで活躍したのが町見術、すなわち土地の遠近高低を測る測量術である。日本の町見術は、中国伝来の算術を用いた手法に、天文観測を含むポルトガル流の航海術やコンパスと定規を用いるオランダ流の測量術を加え、独自の進化を遂げていった。その代表たる清水貞徳の町見術は規矩術とも呼ばれている。ここで、規はコンパス、矩は定規をさす。
こうした測量術の発展や地方測量家の出現が、後の長久保赤水による「赤水図」や伊能忠敬による「伊能図」へとつながっていった。
『分度余術』 松宮俊仍著 享保十三年(1728)自序 写本3巻6冊
松宮俊仍 (1686-1780) は兵学者だが、規矩術も研究し『分度余術』を著した。下巻では、日尺(航海用アストロラーベ)で太陽の南中高度を測り緯度を求める日晷測法や、星尺(四分儀)で北極星の高度を測り緯度を求める星度測法などが説明されている。
『渡海標的』 石黒信由著 天保四年(1833)自序 刊本1冊
伊能忠敬と同時代、今の富山地方には、和算家で測量術を研究し天文暦術を学んだ石黒信由 (1760-1836) がいた。この『渡海標的』では、象限儀で北極星の高度や太陽の南中高度を測り、緯度を求める方法が示されている。信由は忠敬による北陸地方の測量にも同道している。