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貴重資料展示室

第48回常設展示:2013年4月1日〜2014年3月31日
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潮汐

潮汐とは潮の満ち引きのこと。月と太陽の引力により地球が変形させられることによって引き起こされる。国立天文台が編纂している『理科年表 [外部サイト]』には、暦部に「潮汐、各地潮時の平均改正数」が掲載されている。

昆陽漫録(こんようまんろく)』 青木昆陽 宝暦十三年(1763) 写本6冊

昆陽漫録2 昆陽漫録1 (番号:7947、マイクロなし)

八代将軍徳川吉宗の命で蘭学書の研究をしていた青木昆陽 (1698-1769) は、飢饉対策として薩摩芋の栽培を進言したことで名高い。その随筆集である『昆陽漫録』は、単語ごとに、主に和漢書から引用して説明するともに、見解を加えている。引用されている和漢書は数多く、また蘭学の知識も豊富に見られる。天文学・暦学に関する単語の説明では、西洋の天文学の優秀さを率直に褒めている。

博物学や書誌学、自然科学など多岐に渡って著述されており、「潮」の項目では「潮の漲退、月にかかるといへども、地勢と海勢とによりて不同あり。我国東海は、潮の漲退あれども、北国は漲退なし。これにて地勢によることしるべし。」とし、『中山伝信録』の記述を基に福建と琉球の潮汐表を作成し、違いがあるのは海勢によるものとして、最後は「潮汐の一ならざることしるべし。」で締めている。(書下し文は『日本隨筆大成 十巻』を参考。)

和蘭陀海鏡図解(おらんだかいきょうずかい)』 本木良永訳 安永十年(1781) 写本1冊

和蘭陀海鏡図解1 和蘭陀海鏡図解2 (番号:23、マイクロNo.69)

オランダ通詞であった本木良永 (1735-1794) は自然科学の蘭書を訳し、地動説を日本に紹介したことで知られる。本書は航海術書の訳本。潮汐は月の影響が主であり、月に面しているところが満潮となる。航海のために各地で何時何分に干満があるかを知るのが重要であるとし、月がどの方位にあるかは測量 (観測) か月齢で知ることができるとしている。測量には図のような赤道針盤を使用するとある。

航海金針』 19世紀 刊本1冊

航海金針1 航海金針2 (番号:66、マイクロNo.99)

清で刊行された航海術書。近海での航路の取り方、星による位置の出し方等が記されており、西洋の知識・技術が採り入れられている。国立天文台所蔵のものは「薩府学聚珍版」の印があり、この印は薩摩藩で刷られた活字本を意味する。

潮について雑説に記されていて、「中華人士皆云う。気化悟り難し。或いは云う。海中に大穴有り。巨魚出入りするや。入れば即ち水溢れ而して潮漲す。出れば即ち水帰して潮引く。・・・」と俗信を紹介した後、月の影響によって潮の満ち引きがあると説明している。

気海観瀾(きかいかんらん)』 青地林宗 文政十年(1827) 写本1冊

気海観瀾1 気海観瀾2 (番号:7926、マイクロ7004)

医学出身の蘭学者である青地林宗 (1775-1833) は、文政五年(1822)に天文方に招聘されて、蘭書の翻訳に従事した。本書はオランダの科学者ヨハネス・ボイスの本から翻訳し、編集したもので、物理学として引力・圧力・光等自然科学全般を説明し、最後に潮汐について触れている。

暦象新書

「天体之引力有る也。其の尤も顕著なる、太陰之地球に於ける如し、海潮此を為し升降す、是以て、月躔(げってん)を推歩し、而して以て之を(はか)る可し。太陰、干其の地の子午規に()む。即ち其の海潮(ます)。・・・」とあるように、”引力”という用語を用いて説明されている。”引力”という用語は、志筑忠雄 (1760-1806) がジョン・キールの書を訳した『暦象新書』(下) が記された際に造られたものとされる。

明治二十二年 潮候時』 渋川敬典(よしのり)本算 今泉忠道副算 1889年 写本2冊

潮候時1 潮候時2 (番号:4871、マイクロなし)

渋川敬典 (1938-1904) は渋川家として最後の天文方であり、明治維新後は大学星学御用掛となり、編暦に携わった。本推算では1889年1月から12月まで1日ごとに、龍動(ロンドン)と東京の一次潮と二次潮の時分と、暦面での満干の時分が記されている。版心 (袋閉じした中央部分) には「編暦懸」とある。なお、暦には、明治13年から潮候時の記載があった。

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