本文へ移動

貴重資料展示室

第04回常設展示:1992年12月5日〜1993年3月24日
[前回] [次回]

江戸時代の宇宙論

一般公開日の主テーマが「宇宙」であったので、江戸時代の代表的な宇宙観について呈示した。

古代中国前漢の『准南子(えなんじ)』には早くも宇宙生成論と考えられるものが書かれている。また、宇宙構造論として「蓋天説(がいてんせつ)」や「渾天説(こんてんせつ)」があった。日本では江戸時代に西洋天文学や宇宙観に関する思想が中国経由で輸入されたが、他にイエズス会(耶蘇会)の活動と共にもたらされたり、長崎経由での蘭学を通して日本に入ってきたものもある。

暦象新書 附録 混沌分判図説(こんとんぶんぱんずせつ)志筑忠雄(しづきただお)

暦象新書1 暦象新書2 暦象新書3

『暦象新書』は、ジョン・キール (John Keill) 著 "Introductiones ad veram Physicam et veram Astronomiam" の蘭訳から志筑忠雄が和訳し、さらに自分の説を加えて著述した (寛政十年〜享和二年) 上・中・下編の七冊本で、写本が国立天文台に所蔵されている。この本の中で使われている「重力」「求心力」「遠心力」といった言葉は現在でも使われており、コペルニクスの地動説重力による運動楕円運動 他が著されている。「附録」にある「混沌分判図説」は宇宙の生成について解かれているが、是非はともかく日本人として科学的に考えられた「宇宙論」の最初であろう。

著者の志筑忠雄 (1760-1806 中野柳圃(りゅうほ)とも) は、長崎出島の稽古通詞となったが病身を理由に職を辞した。その後蘭学の研究に没頭し、天文・地理・数学・物理等にくわしい。

仏国暦象編』 円通著 文化七年序 刊本5巻5冊

須弥山の図

仏教界では古くから「須弥山(しゅみせん)説」があり、独自の宇宙観を持っていた。この須弥山説は世界の中心にそびえる「須弥山」があり、太陽も月もそのまわりをめぐるという考え方である。特に『仏国暦象編』5巻をあらわした円通(えんつう) (1754-1834) は仏教宇宙観擁護のため論陣をはった。

[前回] [次回]