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貴重資料展示室

第52回常設展示:2015年4月1日〜2016年3月31日
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明治以降昭和初期公文書

国立天文台の前身である東京天文台は、海軍水路部観象台内務省地理局観測課帝国大学理科大学天象台の統合により、帝国大学理科大学付属東京天文台として明治21年(1888)に発足した。その年から約50年間の公文書が、一部は震災や火災で失われたものの、今も国立天文台に残されている。これらは東京天文台の歴史を知るうえでの重要な資料であることはもちろん、明治以降の日本の天文学史にも寄与するものである。

東京天文臺規則と歴史『明治二十三年事務簿』 明治23年(1890) 1冊

東京天文臺規則と歴史1 東京天文臺規則と歴史2 (番号:K0004、マイクロなし、施設課資料)

前半は東京天文台の為すべきこととして星学研究、編暦業務、学生の育成、陸軍の正午号砲のための時刻を連絡すること、逓信省東京電信局への標準時正午を知らせる電報等と述べている。後半は、星学の重要性、天文方からの歴史を綴り、他国や天文方の規模と東京天文台の規模を比較したうえで、東京天文台には台長一人、観測者二人、編暦者四人、書記一人しかいないと記し、東京天文台の拡充を求めている。欄外には朱書きで「二十四年十一月理科大学ヘ呈出シタル同年致沙汰ニ付テノ説明之事」とある。

『東京大學百年史 部局史三 東京天文台』29頁には「明治二十二年(一八八九)二月、寺尾寿台長は、理科大学学長菊池大麓に (中略) 天文台拡充の必要を説き、予算の増額を要望している。 (中略) そしてこの上申を具体化して作られた明治二十四年度の予算要求書・・・」とある。これは明治22年の上申書を、明治24年度予算要求の際に説明書として提出したものの控えであると思われる。

明治三十四年本暦原稿調製ノ件『自明治三十三年四月至庶務書類』 明治33年(1900) 1冊

明治三十四年本暦原稿調製ノ件 (番号:K0017、マイクロNo.71)

編暦は東京天文台の主要な事業の一つであったので、公文書には暦関連のものも多く残されている。この図は、明治33年(1900)に記された翌年の暦の原稿に関する伊勢神宮の神宮司庁とのやり取りを総長へ報告する文章の案である。明治15年に本暦・略本暦の頒布は神宮司庁で取り扱うこととなり、自由化されたのは昭和21年(1946)である。

『緯度変化観測木村榮嘱託ニ付照会』 明治27年(1894) 1枚

緯度変化観測木村榮嘱託ニ付照会 (番号:K0014、マイクロなし)

年代不順で2つの袋にまとめられている公文書の1つで、緯度変化の観測のため大学院学生である木村榮を嘱託するとある。

木村榮は明治28年(1895)から明治30年(1897)まで東京天文台で緯度観測をしていた。明治32年(1899)に万国測地学協会の要請による国際共同事業として水沢に緯度観測所が設立されるとその臨時所長となり、緯度変化の新たな成分であるZ項を発見し、1902年に論文として発表した。6か所あった観測所のうち水沢緯度観測所の観測値は当初は精度が低いと評されていたが、Z項を当てはめるとむしろ最も精度が高いことが証明された。Z項の発見は、日本人による天文学への初の大きな貢献でもあった。木村は昭和12年(1937)には第一回文化勲章を受章している (木村榮記念館)。

見学依頼

国立天文台では常時キャンパスを公開しており、三鷹キャンパスの年間の来台者は1万8千人を超える。東京天文台時代には一般公開の仕組みはなかったものの、団体見学の希望があれば応じていたようで、参観に関する公文書も多数残されている。

石川県師範学校生徒参観ノ件『明治二十三年事務簿』 明治23年(1890) 1冊

石川県師範学校生徒参観ノ件 (番号:K0009、マイクロ105)

石川県師範学校生徒の参観について校長から台長に宛てられた書類。余談ではあるが、男子生徒25名に付き添いの職員7名と、生徒一人頭に対して職員数が多い。

見学依頼はがき『大正十一年度庶務書類』 大正11年(1922) 1冊

見学依頼はがき (番号:K0051、マイクロ105)

三重県師範学校からの葉書で、修学旅行の一環としての見学依頼である。

東京帝國大学理科大学東京天文臺本館新築圖『自大正三年度至大正九年度東京天文台改築図』 1冊

東京天文臺本館新築圖1 東京天文臺本館新築圖2 (番号:K0004、マイクロなし、施設課資料)

当初東京天文台は麻布に設けられたが、施設が増えるにつれ用地が狭隘化し、また周辺の市街化がもたらす明かりが観測条件を悪化させた。そのため移転用地として明治42年(1909)3月、三鷹に土地を購入した。図の本館は大正5年(1916)に着工され、大正10年(1921)に竣工した。

本館は現存していないものの、当時建設された旧図書庫や守衛所等は今も残されており、登録有形文化財となっている。本資料にはこれらの建物の図面も含まれる。

参考文献:
『東京大学百年史:部局史三:東京天文台』 東京大学百年史教養学部史編集委員会編 東京大学
『緯度観測100年:North atmosphere of mind』 緯度観測100年編集委員会編 国立天文台地球回転研究系/水沢観測センター

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