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会合間隔のばらつき†
- 会合の間隔は平均的には会合周期に一致しますが、1回1回の間隔は会合周期ぴったりというわけではありません。
- もし、2つの天体がどちらも円軌道、すなわち一定の角速度で公転していれば、必ず会合周期間隔で会合します。
- しかし、一般に天体は楕円軌道を運動しており、公転速度が変化するため、会合間隔にはばらつきが生じます。
- どの程度ばらつくかは、2つの天体の離心率と近日点方向、すなわち楕円軌道の度合いと向きに依存するので、個別に検討する必要があります。
金星の場合†
- 金星の外合〜外合、内合〜内合、留〜留、最大離角〜最大離角の間隔を調べると、以下のようなグラフになります。
- 平均値は会合周期の583.9日です。
- 金星の場合は5会合周期≒8年となりますので、5会合分の間隔を調べれば、後はそれをほぼ繰り返します。
- それぞればらつきはありますが、内合〜内合・最大離角〜最大離角・留〜留の間隔に比べ、外合〜外合の間隔はばらつきが大きいことがわかります。
- このばらつき具合の違いは内合だから、外合だからということが原因ではありません。
- もし両方とも円軌道で公転速度が一定であれば、時計の短針と長針が一定の間隔で内合(たとえば12時)と外合(たとえば6時)を繰り返すのと同じで、内合でも外合でも間隔は等しく会合周期となります。
- 詳しくは後述しますが、これは地球と金星の軌道が以下の条件を満たすことに起因します。
- 両方とも楕円軌道であること
- 両者の近日点方向が近い関係にあること
内合〜内合†
- 地球と金星は8年で5回会合する関係にあり、会合地点は軌道上たかだか5か所に限られます。
- 議論を単純にするため、地球と金星の近日点方向が同じだとしましょう。
#現実的にも違いはたかだか30度ほどでしかありません。
- さらに、地球と金星があるとき同時にこの近日点方向にいた=内合1とします。
- 1回の会合で地球は8/5=1+3/5[周]、金星は1周多く2+3/5[周]進み、次は内合2の場所で内合します。
- 1周分進むと楕円軌道の影響は±がキャンセルされますので、会合間隔に影響を与えるのは残りの3/5周だけです (下図)。
- 図のように、残り3/5周では地球も金星も遠日点側が少し多くなっています。
- 基本的に、内合の前では地球が近日点付近なら金星も近日点付近、地球が遠日点付近なら金星も遠日点付近にあり、地球が速いときは金星も速く、地球が遅いときは金星も遅くなります。このため、金星の速度−地球の速度は大きく変動しません。
- それでも、離心率は地球の方が大きいので、わずかに地球の寄与が勝り、間隔は会合周期より少し短くなります。
- その後も、影響を与える残り3/5周では地球と金星は同じ側にありますので、金星の速度−地球の速度は大きく変動せず、地球の離心率が少し大きいことが寄与します。
- 内合2→内合3では、地球も金星も近日点側に多くおり、間隔は長くなります。
- 内合3→内合4では、地球も金星も遠日点側に多くおり、間隔は短くなります。
- 内合4→内合5では、地球も金星も近日点側に多くおり、間隔は長くなります。
- 内合5→内合1では、地球も金星も遠日点側が少し多く、間隔は少し短くなります。
外合〜外合†
- 内合の場合と同様に、地球と金星の近日点方向が同じで、最初はともに近日点方向にいた=内合1と仮定します。
- 内合のときと同様に、残り3/5周の経路を考えればよいのですが、
- 基本的に、外合の前では地球が近日点付近なら金星は遠日点付近、地球が遠日点付近なら金星は近日点付近にあり、地球が速いときは金星は遅く=金星の速度−地球の速度は小さく、地球が遅いときは金星は速く=金星の速度−地球の速度は大きくなります。
- このように、金星の速度−地球の速度は内合の場合に比べて大きく変動しますから、間隔の変動も大きくなります。
- 最初の外合位置は内合1と内合2のちょうど半分で、8/10=4/5周進んだところです (外合1)。
- 残り3/5周の経路は図の通りで、地球はほとんど遠日点側=遅い、金星はほとんど近日点側=速い、したがって、この間の間隔はとても短くなります。
- 次の外合位置は4/5+8/5周=2+2/5周進んだところです (外合2)。
- 残り3/5周の経路は図の通りで、地球は近日点側にいることが多く、金星は遠日点側にいることが多いです。したがって、間隔はかなり長くなります。
- その次の外合位置はさらに8/5周進んだところです (外合3)。
- 残り3/5周の経路は図の通りで、地球は遠日点側が少し多く、金星は近日点側が少し多いです。したがって、間隔は短くなります。
- その次の外合位置はさらに8/5周進んだところです (外合4)。
- 残り3/5周の経路は図の通りで、地球は遠日点側が少し多く、金星は近日点側が少し多いです。したがって、間隔は短くなります。
- その次の外合位置はさらに8/5周進んだところです (外合5)。
- 残り3/5周の経路は図の通りで、地球は近日点側にいることが多く、金星は遠日点側にいることが多いです。したがって、間隔はかなり長くなります。
- この条件で間隔を計算すると、下図のようになります。
近日点方向が反対になると†
- ここまでは地球と金星の近日点が同じ方向にあると仮定していました。
- 地球と金星の近日点方向が180°反対にあると仮定すると、内合と外合の状況が逆転します。
- 内合の前では、地球が近日点付近なら金星は遠日点付近、地球が遠日点付近なら金星は近日点付近にあります。したがって、地球が速いときは金星は遅く、地球が遅いときは金星は速くなります。すなわち、金星の速度−地球の速度は大きく変動し、間隔も大きく変動することになります。
- 外合の前では、地球が近日点付近なら金星も近日点付近、地球が遠日点付近なら金星も遠日点付近にあります。したがって、地球が速いときは金星も速く、地球が遅いときは金星も遅くなります。すなわち、金星の速度−地球の速度は大きく変動せず、間隔も大きく変動しないことになります。
- この条件で間隔を計算すると、下図のように内合と外合の関係は逆転します。
- ただし、実際に近日点の方向が変わるのには長い時間がかかりますので、現状について考えれば十分でしょう。
楕円軌道の必要性†
- また、地球と金星両方とも楕円軌道である必要があります。
- 両方円軌道や片方だけ円軌道ではこのような違いは生じません。
関連ページ†
Last-modified: 2020-05-27 (水) 21:28:05