江戸時代になり平和が訪れると暦法に関する研究が盛んに行なわれるようになり、渋川春海によって初めての日本の暦法「貞享暦」が作られ、貞享元年(1684)に宣明暦はその役目を終えた。
今回展示した書物は宣明暦法に関係するもので、年代的にも古く貴重な書物である。
この本は賀茂在富の自筆本であり、永正八年(1511)賀茂在富の署名がある。賀茂家は代々暦道を司った家であったが、賀茂在富は息子に殺害され、賀茂家は在富の代で一時的に途絶えた。
この本には日食・月食の推算に関するメモなどが書かれている。応永二十七年(1420)に賀茂
宣明暦のテキストである。この本の特徴は多色刷りの刊本であることで、朱、青の色が刷られている。また、表紙の色と紙質は江戸初期に発行された書物に使われている代表的なものである。
会津 (現福島県の一部) の算学者であった安藤有益が宣明暦の計算法について実例を挙げながら説明している。長慶宣明暦という表題は、中国唐王朝の長慶二年から施行されたことに由来する。
外題は表題の通りだが、内題は『大唐陰陽書』で、宣明暦より一代前の大衍暦の暦注書であり、最も古い暦注書である。宣明暦でも同じ暦注書が使われていたという。残念ながら、写された時代、筆者は不明である。