本文へ移動

月の高度・方位角について

月だけに適用される高度・方位角についての計算式がある訳ではない.しかし夜空を見上げて,まず目につくのは月であり,その位置を確かめたいと思うであろう.年表の掲載値を用いてこれを求めてみよう.

見上げる夜空をO点を中心とした半球と思えば,高度 h,北から東まわりに測った方位角 A は,

 cos h sin A = −cos δ sin H ・・・(1)
 cos h cos A = cos φ sin δ − sin φ cos δ cos H ・・・(2)
 sin h = sin φ sin δ + cos φ cos δ cos H ・・・(3)

で求められる.

補足

ここで,t 高度・方位角を求める時刻 − 9時 (世界時中央標準時の差), θ0 グリニジ視恒星時 (年表:世界時 0hのグリニジ視恒星時のページ参照), (λ, φ) あなたのいる場所の経度 (東経を+)・緯度,( α, δ ) 月の赤経・赤緯 (年表:太陽,月のページ参照) とすれば時角 H = θ0 + 1.0027379t + λα となる. 1.0027379 は太陽時の恒星時への補正値である.

計算例

赤経と赤緯

さて,東京(λ = 139°45′ 9h19mφ = 35° 39′ )で1993年1月31日の上弦の月について高度・方位角を求めてみよう.まず,年表:太陽,月によって月の出入の時刻を確かめてみる.月の出は10時41分だから昼間から月は出ていることになる.南中は17時49分,真南の空に見えるはずである.時刻を18時とすれば,月の赤経・赤緯を1月31日と2月1日の値から比例配分で求めて,

 α = 2h32m + (3h24m − 2h32m) × (18 − 9) / 24 = 2h52m
 δ = 18°19' + (20°58'−18°19') × (18 − 9) / 24 = 19°19'
 θ0 = 8h41m
ゆえに
 H = 8h41m + 1.0027379 × (18h − 9h) + 9h19m − 2h52m = 24h10m 0h10m

高度と方位

1時間は角度に直すと15度にあたるから電卓などで三角関数の値を求めると

 sin φ = 0.5828,cos φ = 0.8126, sin δ = 0.3308,cos δ = 0.9437, sin H = 0.0436,cos H = 0.9990

ただちに,式(3)から sin h = 0.9589, h = 73.5°

式(1)÷式(2)から tan A = 0.1466

天球と月の高度,方位角

明らかに月は真南から西に動いているから180度を加えて A = 180° + 8.3° = 188.3°

他の時刻

同様に,t = 24h − 9h とすれば h = 11.6°,A = 286.3°となって,2月1日午前0時西の山際にかかる月を見ることになる.そして午前1時3分月入.ちなみに,同日の2時間おきの値を示すと下の表のようになる.

概算値との差は1度以内におさまっているが,特に高度の低いときに違いが大きい.これは月が地球に十分近いために,地心から見た月の赤経・赤緯と観測者から見た月の赤経・赤緯が大きく異なるためで,これを地心視差と呼んでいる.

月の高度と方位

月の高度と方位
時刻 17h49m (南中) 18h00m 20h00m 22h00m 24h00m 1h03m (月入)
方位角 (A) 179.70° 188.61° 248.45° 270.46° 286.30° 294.82°
高度 (h) 73.47° 73.33° 57.49° 34.24° 10.97° -0.55°

暦象年表1993より加筆、訂正