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旧暦2033年問題†
- 旧暦は既に廃止された暦ですが、さまざまな文化や慣習が太陰太陽暦に端を発していることもあり、今でも根強く生き残っています。
- 一般的には、現代天文学にもとづく朔 (新月)や二十四節気の情報をもとに、天保暦ルールを準用してうるう月を定めているようです。
- 2033年から2034年にかけて、中気を含まない陰暦月が3つ現れますが、
- 秋分を含む陰暦月と冬至を含む陰暦月の間に1陰暦月しかなく、秋分を含む月は8月・冬至を含む月は11月という天保暦ルールを満たすことができません (二至二分の間がひと月でルール破りになるケース)。
- 大寒と雨水が同じ陰暦月に入りますが、どちらをとっても天保暦ルールに反しません (中気の優先順位がなくどちらでもよいケース)。
- つまり、天保暦ルール通りにはうるう月を決められず、ルールを緩和するとしても3通りの入れ方が考えられることになります。
- 冬至を優先するか、秋分を優先するか (案1と案2)
- 冬至を優先しても、大寒と雨水には優先順位がない (案1と案3)
- このような事態は天保十五年(1844、弘化元年) の天保暦導入後初めて起こることで、いわゆる旧暦2033年問題と呼ばれています。
- 一般社団法人 日本カレンダー暦文化振興協会では、閏11月を推奨するという見解 を発表しています。
朔 | 中気1 | 中気2 | 案1 | 案2 | 案3 |
2033/07/26 | 処暑( 8/23) | | 7月 | 7月 | 7月 |
2033/08/25 | | | 8月 | 閏 7月 | 8月 |
2033/09/23 | 秋分( 9/23) | | 9月 | 8月 | 9月 |
2033/10/23 | 霜降(10/23) | | 10月 | 9月 | 10月 |
2033/11/22 | 小雪(11/22) | 冬至(12/21) | 11月 | 10月 | 11月 |
2033/12/22 | | | 閏 11月 | 11月 | 12月 |
2034/01/20 | 大寒( 1/20) | 雨水( 2/18) | 12月 | 12月 | 1月 |
2034/02/19 | | | 1月 | 1月 | 閏 1月 |
2034/03/20 | 春分( 3/20) | | 2月 | 2月 | 2月 |
考え方†
冬至を優先?†
- 時憲暦ルールの採用?
- 天保暦よりも先に定気法を採用した中国の時憲暦 (農暦) では冬至を重視しています。この時憲暦ルールを適用すると必然的に案1のようになり、問題は起こりません。
- つまり、この問題は、冬至だけでなく二至二分を用い、より忠実に季節をあわせようとしたために起こる現象といえます。
- 日本や中国で使われていた暦法では冬至を定めるのが出発点でしたから、冬至を優先するのは自然な考え方といえます。
- ただし、歴史的には天保暦ルール独自でも成功した事例があったことも忘れてはなりません。
- 天保暦ルールを残しつつ、冬至を優先すればよい?
- 本質的な原因は定気法の採用により、朔(新月)の間隔=月の満ち欠け周期と中気の間隔との間に逆転現象が発生するようになったことです。
- これが起こるのは冬至というより近日点の近傍、すなわち中気の間隔が短く、満ち欠け周期が長いところです。
- 現在はたまたま冬至と近日点が近い関係にありますが、近日点に近い節気は歳差+近日点の移動により約21,000年周期で入れ替わります。
- これにより、将来的には春分と夏至の間や夏至と秋分の間がひと月になることもあり、冬至を優先というルールを加えるだけでは不十分です。
- 冬至優先を加えても、案1と案3のような不確定性が残ります。
- 近日点と節気の関係は約21,000年周期で変化していきますから、優先順位を決めるなら全部決めないといけないことになります。
- その優先順位は新たなルール破りになるケースを生じないように決めないといけません。
- また、それによって置閏法が複雑になるのは避けたいところです。
- 無理やり朔旦冬至を作る?
- 2033年に限れば悪くないように見えますが、問題が発生するのは冬至とは限りませんので、本質的な解決策とは言えません。
- このような問題が起こることはさほど多くありませんので、その都度便宜的に決める、という選択肢もあるでしょう。
- ただし、既に廃止された暦であり、公的な機関が決定することはありません。
定気法を使わない?†
- 平気法では逆転現象は起きませんので、ひとつの解決策になります。
- もちろん、歳末置閏など、二十四節気を使わない置閏法でもこうした問題は発生しません。
その他†
- その行事の意味を考えて、適切に定義しなおすことも考えられます。例)中秋の名月
周期と頻度†
- 引き金は1朔望月に中気が2つ入ること=うるう月と逆転現象の時期が重なるとき
- 逆転現象の影響
- 一回り前の2014年は逆転現象が弱いところにあたります。
- 逆に、1699〜1700年は天保暦導入前ですが、逆転現象の激しいところで問題が起こる例です。
- 冬至の後、中気が立て続けにやってきて冬至と春分の間がひと月になります。
- 肝心の2033年は必ずしも逆転現象が激しいというわけではありません。
- つまり、逆転現象の度合いによりさらに限定されますが、それだけでは判断が難しいことがわかります。
- 19年周期の中でも逆転現象が弱ければ2つの中気を持つ月は現れない。
- 逆転現象が激しくなくても、運が悪いと問題が起こりうる。
- 逆転現象の周期=月の満ち欠けの変動周期〜8.85年は参考程度でよい。
- 19年周期が成り立つのは200年程度までです。
- ±200年=計400年ほどが同じ19年周期の系列で問題が起こる期間で、19年の整数倍間隔で起こります。
- なお、2033年は複合ケースですが、二至二分の間がひと月でルール破りになるケースと中気の優先順位がなくどちらでもよいケースは、バラバラに起こるのが普通です。
- 今後は、2147-2148年に後者、2223-2224年に前者、2242-2243年に後者があります。これらはそれぞれ2033年の19年×6、10、11年後です。
- 運が悪いと19年間隔で頻発する可能性もありますが、当面はそのようなことはありません。
- それ以上では、異なる系列に移ります。
- 334太陽年≒4131朔望月という関係が成立します。4131=235×17+12×11+4ですから、最初の19年周期より11年とうるう月4回分だけ異なる系列に移ることを意味します。
- 月の満ち欠け周期の変動も考慮するならば、239太陽年≒2956朔望月≒3168近点月がわりと近い関係です。2956=235×12+12×11+4ですから、これも最初の19年周期より11年とうるう月4回分だけ異なる系列です。
- ただし、実際に問題が起きるかどうかには微妙な違いが効いてきますので、239年後や334年後に必ず別な系列に移るというわけではありません。239+19×N年後くらいにとらえるとよいでしょう。
- 平均的には、
- 19年周期のうち、半分ほどで1朔望月中に2つの中気が入ります。
- さらにその半分ほど(下記)は天保暦ルールで解決します。
- 残りが問題になりますから、19×2×2〜およそ80年に1回くらいの頻度ということになります。
- ただし、ばらつきはかなり大きく、19年間隔から数百年間隔までマチマチです。
天保暦ルールの解決率†
- 同じ19年周期の系列が活動する400年ごとに、天保暦ルールによる解決率を調べるとだいたい以下のようになります。
- 2中気:1朔望月に2つの中気、時憲:結果的に時憲暦と同じ置閏で解決、独自:天保暦独自の置閏で解決、解決:時憲+独自、問題:問題発生、解決率:解決/2中気
- 条件により多少数値は前後しますが、傾向は変わらないと思います。
- じつは半分ほどしか解決できていないことがわかります。
- しかもそのほとんどは結果的に時憲暦と同じ置閏となって解決されるものです。
- 時憲暦ルールから外れても独自置閏で解決できるケースは数えるほどしかありません。
- ただし、幸か不幸か、1601年〜2000年は、
- 独自置閏による解決も含め、90%と驚異の解決率を示しています。
- 唯一解決できないのは1699-1700年のみですが、これは天保暦にとっては導入前、時憲暦にとっては導入後のことでした。
期間 | 2中気 | 時憲 | 独自 | 解決 | 問題 | 解決率 |
1〜 400年 | 13 | 6 | | 6 | 7 | 46% |
401〜 800年 | 10 | 7 | | 7 | 3 | 70% |
801〜1200年 | 11 | 7 | | 7 | 4 | 64% |
1201〜1600年 | 8 | 5 | | 5 | 3 | 63% |
1601〜2000年 | 10 | 8 | 1 | 9 | 1 | 90% |
2001〜2400年 | 9 | 5 | | 5 | 4 | 56% |
2401〜2800年 | 13 | 7 | 1 | 8 | 5 | 62% |
計 | 74 | 45 | 2 | 47 | 27 | 64% |
関連ページ†
Last-modified: 2024-10-15 (火) 14:40:16