暦Wiki/インド暦/Rasi - 国立天文台暦計算室

ラーシ(Rāśi)と月の数え方†

ラーシとは、黄道を30°ごと＝12個に等分したものです。
- 西洋の黄道十二宮に相当する概念です。
- 座標系が同じなので、各ラーシはナクシャトラ(二十七宿)を2＋1/4個分ずつ含みます。表中の漢訳と二十七宿は宿曜経によります。

Rāśi	黄経始点	月名	十二宮	漢訳	二十七宿
Meṣa	0°	Vaiśākha	おひつじ座	羊宮	婁(4)胃(4)昴(1)
Vṛṣa	30°	Jyaiṣṭha	おうし座	牛宮	昴(3)畢(4)觜(2)
Mithuna	60°	Āṣāḍha	ふたご座	婬宮	觜(2)参(4)井(3)
Karkaṭa	90°	Śrāvaṇa	かに座	蟹宮	井(1)鬼(4)柳(4)
Siṁha	120°	Bhādrapada	しし座	獅子宮	星(4)張(4)翼(1)
Kanyā	150°	Āśvina	おとめ座	女宮	翼(3)軫(4)角(2)
Tulā	180°	Kārtika	てんびん座	秤宮	角(2)亢(4)氐(3)
Vṛścika	210°	Mārgaśīrṣa	さそり座	蝎宮	氐(1)房(4)心(4)
Dhanus	240°	Pauṣa	いて座	弓宮	尾(4)箕(4)斗(1)
Makara	270°	Māgha	やぎ座	摩竭宮	斗(3)女(4)虚(2)
Kumbha	300°	Phālguna	みずがめ座	缾宮	虚(2)危(4)室(3)
Mīna	330°	Caitra	うお座	魚宮	室(1)壁(4)奎(4)

インドの太陽暦月は太陽が各ラーシに入る瞬間 saṃkrānti をもって数えます。
- 太陽(地球)はケプラーの法則に従って運動しますから、定気法で定めた二十四節気のように、各月の長さは一定になりません。
- ラーシは節月と似ていますが、ニル・アヤナ座標系で分割しますので、太陽年ではなく恒星年にもとづく太陽暦になります。
  - このため、季節に対しては毎年20分程度ずつずれていきます。ユリウス暦のずれは毎年11分程度ですから、その2倍近く大きなずれになります。
  - その結果、春分であったはずのMeṣaのsaṃkrāntiは、現在では4月の13～14日ごろになっています。
各月の名称は、その月の満月がどのナクシャトラ近辺に来るかに由来しています。
名称、saṃkrānti を含む日をどちらの月に入れるか、どの月を年初にするか、紀元をいつにするかなどさまざまな流儀があり、太陽暦だけでもいくつかの種類があります。

太陰暦月は新月がどの太陽暦月に入るかによって数えます。
一般に太陽暦月は太陰暦月よりも長く、ときどき1つの太陽暦月に2つの新月が含まれることがあります。
- この場合、どちらも同じ月名を用いますが、最初の月にはMalaまたはAdhikaを、後の月にはŚuddhaまたはNijaをつけて呼びます。
- Adhikaは「余分な」という意味で、うるう月を表わしています。日本のうるう月は本月の後に来ますが、インドではうるう月が本月の前に来ます。
- Malaは「不吉な」とか「汚い」といった意味で、原則としてこの月には宗教行事は行なわれません。
一方、太陽暦月の決め方は定気法に類似していますので、冬場には太陽暦月が太陰暦月より短くなり、1つの太陽暦月に1つも新月が含まれないケースも発生しえます。
- この場合、その太陽暦月に対する太陰暦月はなくなります。このような太陰暦月をAṃhaspatiといいます。太陽暦月名にKṣayaをつけて呼ぶこともあります。
- そのしわ寄せとして新月を2つ含む太陽暦月がほかにも発生します。このうち最初の月をSaṃsarpaと呼び、うるう月ではなく通常の暦月として扱います。

SaṃsarpaとAṃhaspatiは、2033年問題と似たようなパターンで発生します。
- 近年では1963～1964年と1982～1983年にありました。次は2123～2124年です。
- 以下はIndian Astronomical Ephemeris (The Indian Ephemeris and Nautical Almanac) の配月例です。配月の仕方は暦によっても異なるようです。
- 日時はインド標準時によります。
1982～1983年の場合

Rāśi	年月日	時刻	太陰暦月
Kanyā	1982-09-17	1^h25.8^m	新月が２つ
	1982-09-17	17^h39.1^m	Āśvina (Saṃsarpa)
	1982-10-17	5^h34.1^m	Kārtika
Tulā	1982-10-17	13^h16.8^m
Tulā	1982-11-15	20^h39.9^m	Mārgaśīrṣa
Vṛścika	1982-11-16	13^h01.5^m
Vṛścika	1982-12-15	14^h48.0^m	Pauṣa
Dhanus	1982-12-16	3^h37.7^m
Dhanus	1983-01-14	10^h37.7^m	Māgha (Kṣaya - Aṃhaspati)
Makara	1983-01-14	14^h20.7^m	新月がない
Kumbha	1983-02-13	3^h20.4^m	新月が２つ
	1983-02-13	6^h01.8^m	Phālguna (MalaまたはAdhika)
	1983-03-14	23^h13.4^m	Phālguna (ŚuddhaまたはNija)
Mīna	1983-03-15	0^h14.8^m
Mīna	1983-04-13	13^h28.3^m	Caitra

Rāśi	年月日	時刻	太陰暦月
Tulā	1963-10-17	16^h24.4^m	新月が２つ
	1963-10-17	18^h12.6^m	Kārtika (Saṃsarpa)
	1963-11-16	12^h20.3^m	Mārgaśīrṣa (Kṣaya - Aṃhaspati)またはSecond Kārtika
Vṛścika	1963-11-16	16^h09.5^m	新月がない
Dhanus	1963-12-16	6^h46.4^m
Dhanus	1963-12-16	7^h36.2^m	Pauṣa
Makara	1964-01-14	17^h29.6^m
Makara	1964-01-15	2^h13.4^m	Māgha
Kumbha	1964-02-13	6^h28.8^m
Kumbha	1964-02-13	18^h31.1^m	Phālguna
Mīna	1964-03-14	3^h21.7^m	新月が２つ
	1964-03-14	7^h43.7^m	Caitra (MalaまたはAdhika)
	1964-04-12	18^h07.3^m	Caitra (ŚuddhaまたはNija)
Meṣa	1964-04-13	11^h51.9^m
Meṣa	1964-05-12	2^h31.6^m	Vaiśākha