ラランド (1732-1807 Joseph Jerome Le Francais de Lalande) は、フランスの天文学者でフランスの天体暦や航海暦の編集者でもあった。彼の著作による天文学の一般的教科書である "Astronomie" 第2版 (1771 全3冊、フランス) が、オランダでストラッペ (Arnoldus Bastiaan Strabbe) によって訳され、日本に入ってきたのが、"Astronomia of Sterrekunde" 全5冊である。この本を『ラランデ暦書』と称している。
幕府天文方で寛政の改暦をなしとげた高橋至時は、1803年に個人所有であったこの本を17日間だけ借りて読み、直接西洋天文学にふれ、その内容に感嘆し寝食を忘れて、抄訳に没頭したと云われている。『ラランデ暦書』の翻訳には高橋至時、間重富、高橋景保、渋川景佑らが関わっている。現在、国立天文台にはフランス本全3冊、オランダ本は巻1が欠の4冊が残されている。また、天文台に残されている『ラランデ暦書』の和訳本には次の書がある
渋川景佑 (1787-1856?) によって、上記至時が訳さなかった部分について、解読された。全4冊の内、2冊が国立天文台に残されている。「東岡先生」とは高橋至時のこと。
間重富 (1756-1816) による翻訳。
太陽、五星 (水星・金星・火星・木星・土星)、太陰 (月)、附星/小星 (衛星)、恒星の表。
蕃書調所の印があり、幕府天文方の所持だったことがわかるが、高橋至時が使った『ラランデ暦書』は火災で焼失したので、その後、買い入れたものと考えられる。