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1日とは?
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用語解説
暦Wiki
午前と午後
†
1日を半分に分ける場合、
正午
=
午
の正刻(お昼)の前か後かで
午前
、
午後
と呼びます。
am, pm
はラテン語のante meridiem, post meridiemの略です。
anteは前
、postは後を表します。
ante diem
が日付を逆に数えるように、ante meridiemも時刻を逆に数えるのが本来の使い方です。たとえば、午前11時ではなく正午の1時間前のように数えます。
アルマゲスト
には正午前○時間・正午すぎ○時間だけではなく、夜半(medietatem noctis)を基準とした夜半前○時間・夜半すぎ○時間のような表現も出てきます。
meridiemはmiddayで
1日
の中央=正午となります。diemはdayで日あるいは日中を表わします。
子午線
をmeridian(ラテン語でmeridianus)と呼ぶのは、
視太陽時
では正午 meridiem に太陽が
子午線
を通過〜南中することに由来しています。
午前0時、午前12時、午後0時、午後12時とはいつのことか?
†
法律上の使い方
†
日本では、
太陽暦導入
を宣言した明治5年太政官布告第337号 (改暦ノ布告、
法令データ提供システム
) において、時刻の呼び方が定められています。
この布告では、
正子
=
子
の正刻(真夜中)については
午前0時=午後12時
とされていますが、
正午
については
午前12時
としか書かれておりません。
つまり、
法律上は「午後0時」という呼び方は存在しない
ことになります。
たとえば、正午から10分後は、たとえ正午を過ぎていても、法律上「午前」12時10分のような表現を使わざるを得ません。
自賠責保険の補償期間など、法的に厳密な表記が求められる場合に使われています (例:
損保ジャパン
、
あいおいニッセイ同和損保
)。
夏時刻
のように、午後12時と午前0時を明確に区別することもあります。
日常での使い方
†
時計の文字盤には12が使われることが多いですから、「午前」12時10分といえば夜中で、昼の方は「午後」12時10分だと思う人も多いでしょう。
昼の12時という言い方もよく使われます。
0時ではなく12時を使うのは、ヨーロッパに
0という概念が存在しなかった
ころの名残です。
英語でも正子を12:00am、正午を12:00pmと表記します。
正午については午前でも午後でもないので、12 noonという表記をする場合もあります。
正子についても同様に12 midnightと書けますが、その日の初めかその日の終りかあいまいになります。
逆に、正子を12:00pm、正午を12:00amと表記する人もいて、混乱しています。
この場合、午後12時の後に午後1時が来ることになるので、時間の順序を考える際に混乱します。
デジタル表記の増えた現在でもこのような表記が多く使われています。
正子 (真夜中)
正午 (お昼)
日本 (法律上)
午前0時=午後12時
午前12時 (午後0時)
日本 (日常)
午前12時、午前0時、午後12時
午後12時、午後0時、午前12時
英語
12:00am, 12 midnight, 12:00pm
12:00pm, 12 noon, 12:00am
解決策
†
このように、12時の使用については、人によって思い浮かべる時刻が異なる、数学的に連続しないなどの問題点があります。
当時の欧米の制度をそのまま導入していれば正子が午前12時、正午が午後12時となるでしょうから、明治5年の布告では意図的に0時を導入したと考えられます。
もし「午後0時」を使えば、正午から10分後は午後0時10分になります。正午を境に午前と午後がわかれ、数字も連続的になり、理解しやすくなります。
同布告の「子刻ヨリ午刻迄ヲ十二時ニ分チ午前幾時ト称シ午刻ヨリ子刻迄ヲ十二時ニ分チ午後幾時ト称候事」も正子/正午を境にすると解釈するほうが自然でしょう。
アイディアはよかったが中途半端になったというのも、いかに
太陽暦導入が突然な改暦
だったかを物語ります。
したがって、
正午を境に呼称を変え、「午後0時」を用いる方が適切
といえます。
実際、
明治6年暦
から
明治12年暦
では小暑 午後初時十分、処暑 午後初時八分、下弦 午前初時五十九分のように「初時」と記載されていますし、
明治13年暦
以降では日南中 0時0三分二七秒、大寒 午前0時二十分一秒、満潮 午後0時0九分のように「0時」と記載されています。
独自にルールを定めて対応している場合もあります。
NHKでは原則として「昼の12時」は「正午」、「夜の12時」は「午前0時」としているそうです (
NHK
)。
福岡県春日市には公用文での時刻表示に関する規程があります (
春日市
)。
24時間制
†
0時から24時までの24時間制
を用いるというのもひとつの解決策です。
誰にでも誤解なく簡潔に同じ時刻を伝えることができますので、公共交通機関・コンピューター・軍隊などで広く用いられています。
午前・午後あるいはam/pmを聞き漏らす心配がありません。文字数も少なくなります。
さらに簡潔にたとえば14時00分のことをヒトヨンマルマルと表現することもあります。
午前10時から午後3時までは何時間?といった計算が、15時−10時=5時間で済みます。
正午については、時計の文字盤どおり、12時と表わせます。
正子についても、0時はその日の初め、24時はその日の終わりを表します。
必要に応じて25時、26時といった表記が使われることもあります。
EPGの普及により現在ではほとんど気にならなくなりましたが、昔はTV番組の予約をする際に1日間違えることがよくありました。
ISO 8601やJIS X 0301といった工業規格で用いられるのも24時間制です。
歴史的にも、
1日を細分するのが「時」
の概念であり、1日通しで数えるか昼と夜で分けるのが自然でしょう。
天文学では
正午から正午までが1日
でしたので、午前と午後は別の日になります。
ante meridiem, post meridiemも午前/午後ではなく、正午を基準とした
相対的な時刻表現
でしかありませんでした。
午前/午後のように分けるのはむしろ機械式時計が誕生してからのようです。
太陽の南中
を使えば、
概ね
季節によらず時刻を合わせることができます。
24分割されると、時計の針が何時を指しているか一見しただけではわかりにくいでしょう。
1度に20回以上鐘を鳴らされても何時だかよくわかりません。鳴らす人・鳴らす機巧もたいへんでしょう。
現在でも午前/午後を使うのは、むしろアメリカ・カナダなど少数派のようです (たとえば
Amtrakの時刻表
、
Canadian Rockies Trainsの時刻表
)。
関連ページ
†
質問4-1)正午は午前12時?それとも、午後12時?
参考文献
午前12時? 午後0時? (
NICT
)
プトレマイオス著 薮内清訳『
アルマゲスト
』恒星社厚生閣 (1982)
要素/1日とは?
要素/1日とは?/1時間とは?
要素/1日とは?/1日の始まり
要素/1日とは?/1日の長さ
要素/1日とは?/午前と午後
要素/1日とは?/分・秒とは?
Last-modified: 2017-10-18 (水) 22:00:46