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春分の日・秋分の日

何らかの国民の行事を記念しての「国民の祝日」は,一般には特定の日になるのが普通だが,春分の日・秋分の日は春分日・秋分日とあるだけで日が特定されていない.では,春分日 (秋分日) とはどのように決められているかというと,天文学的な春分 (秋分) −視太陽が天の赤道をよぎる瞬間,つまり,視黄経が0度 (180度) になる春分点 (秋分点) を通る瞬間− を含む日とされている.日のキレ目は中央標準時による.

ところで,1太陽年 −太陽が春分点を通過してから次にもう一度春分点を通るまでの期間− は,平均で365日+5時間49分ほどである.365日 (1平年) を経てさらに6時間弱,時間がたたなければ春分点通過にはならない.このようなことが4回 (4年) 繰り返されると,約6時間×4=24時間 (1日) のずれが生じるが,2月末に閏日を1日入れることで調整される.しかし,これでは1年で11分ほど余分に補整していることになるので,さらに400年に3閏日を抜いて再調整した置閏法による暦が私たちの使っているグレゴリオ暦である.では,この暦で春分日が特定されるかといえばそうはならない.

具体例

1太陽年:1日=約365.2422:1 のようにこの値が簡単な整数にならない時は,春分点をよぎる瞬間の時刻は,永年の間に1日のなかの特定の時間帯にかたよることなく,1日24時間のなかにほぼまんべんなく散らばることがわかっている.とすれば,例えば,3年続く平年の第1年目の春分点通過時刻が3月20日14時 (中央標準時) とすると,年初から3月19日までの通日は78日だから

春分点通過時刻                       春分の日
1年目 78日14時           3月20日
2年目 78日14時  +365日5時間49分
   ≡78日19時49分         3月20日
3年目 78日19時49分+365日5時間49分
   ≡78日25時38分
   ≡79日01時38分         3月21日
4年目 79日01時38分+365日5時間49分
   ≡79日07時27分         3月20日

となって,3年目の春分の日は1日ずれるが,4年目は2月29日に閏日が入って,日付けは1日引き戻されることになる.

これを次々と進めていけば日付けは変わるが,その変わり方にある種の弱い規則性といったものがみつけられるだろう.

複雑な変動要因

しかし,春分点は月の引力による章動・金星など他の惑星による地球軌道への摂動などによって時間にして10分ほど前後にゆれ動くことがある.このようなときに,春分点通過の時刻が日のキレ目 (中央標準時0時) のごく近傍にあれば,月・惑星の影響を精しく計算することなしに,通過の時刻が日のキレ目のどちらに落ち着くのか,つまりは,春分の日がどちらの日付になるのかを決めるのは困難である.そしてまた,同じような状況が再度起った時,同じような地球−月・惑星の位置関係が生じ,同じような時刻のずれが生じるとは考えにくい.このようにして,先の弱い規則性のようなものも徐々に破られていく.

さらに細かいことをいえば,太陽系天体の運動理論によっている力学時系と地球自転に基づいた生活時系 (中央標準時=協定世界時+9時) には差があり,その差は天体観測によって求められるが −1997年ではその差は63秒− ,この値によっても春分点通過の時刻が日のキレ目を越える可能性がない訳ではない.この他にも考慮する小さな量はあるが,これらの諸要素によって春分日 (秋分日も同様) が不規則に移動する様子を理解していただけたと思う.

暦象年表1997より