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暦表時 (Ephemeris Time; ET)†
- 観測や時計の精度が向上すると、地球が一定のスピードで自転していないことがわかってきました。
- それまでは地球の自転にもとづく平均太陽時が使われていました。しかし、平均太陽時もミリ秒レベルではふらつきがあります。
- 仮に天体が一様に運動していても、時刻のほうがふらつくと、天体の動きがふらつくように観測されます。
- 長期的には地球の自転は遅くなり、平均太陽時の進みは遅くなっていきますから、あらゆる天体が見かけ上加速していくように観測されます。
- そこで、自転ではなく地球の公転を使って時刻を定義するようにしたのが暦表時と呼ばれる時刻系です。
- 暦表時は
- 1900年1月0日12時における太陽の平均黄経を279°41′48.04″とします。
- 1秒の長さは暦表時1900年1月0日12時における回帰年(太陽年)の1/31556925.9747です。これを暦表秒といいます。
- 「1900年1月0日12時における」回帰年を基準としますので、回帰年の長さの変動には影響を受けません。
- これはニューカムによる太陽の平均黄経の式で、最初の2項=279°41′48.04″+ 129602768.13″Tを使っています。
- 太陽がある時刻にある場所にいる → ある場所にいるからその時刻だとして、逆に時刻を定義しています。
- 天体はニュートンの万有引力の法則にもとづいて運動しますので、暦表時はその運動方程式の時刻変数と考えることもできます。そして、ニュートン力学の世界では時は一様に流れるわけです。
- ニューカムの式は18世紀後半から19世紀の観測に基づいており、当時の平均太陽時を反映したものになっています。
- したがって暦表秒もそのころの平均太陽時の1秒に近い値であり、導入時点でも暦表秒と平均太陽時の1秒には差異があります。
- それは後に原子秒が定義される際にも引き継がれ、現在に至ります。
暦表時と世界時†
- 時刻と天体の位置が結びついていますので、暦表時は天体の観測を暦と比較することで定めます。
- 観測には月、たとえば星食や月縁の子午線通過が使われます。太陽や惑星では動く量が小さいので時刻の決定精度が低くなります。
- 観測や理論予測の精度が時刻決定精度の限界になります。
- 結果が出るまでに数年かかります。
- 暦表時の確定には時間がかかりますから、日常的には地球の自転をもとにした世界時が用いられます。
- 暦表時と世界時のずれをΔTと呼びます。
暦表時(ET)=世界時(UT)+ΔT
- 暦表時を決定する=観測と予測の比較によりΔTを定める、ということになります。
- 暦表秒
- 暦表時
- 1952年のIAU勧告:暦表時の採用。1秒の基準は恒星年。
- 1955年のIAU勧告:1秒の基準を回帰年に変更
- 1958年のIAU勧告 (IAU ):CIPMによる暦表秒の定義採用
- 1976年のIAU勧告 (IAU ):力学時の採用
関連ページ†
Last-modified: 2017-07-21 (金) 11:34:38