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月食の条件†
満月(望)のたびに月食が起こるわけではない†
- 月食と満月(望)はいづれも月が太陽と反対方向に来る時に起こる現象です。
- 月食とは、太陽と月が地球をはさんではぼ1直線状に並び、月が地球の陰に隠れる現象です。
- 満月(望)とは、月が太陽と反対方向に来て、太陽に照らされた側が地球に向く状態のことです。
- 月の公転軌道面は地球の公転軌道面である黄道面に対して5.1°程度傾いています。
- もし、この傾きがなければ、満月(望)のたびに陰に隠れて月食が起こるはずです。
- しかし、実際にはこの傾きのために、軌道の交点付近で満月(望)となるときにしか月食は起こりません。→ 日食の条件
- 交点付近に来るのは約半年に1回ですから、月食も約半年に1回程度ということになります。
- 月軌道の傾く向きは公転と逆向きに約18.6年の周期で回転します。
交点からの距離†
- 地球(太陽)と月の動きは連動しておりませんので、必ずしも毎回交点ぴったりで満月(望)となるわけではありません。
- 月の視半径は約16′、地球の本影の視半径は約45′と大きさがありますので、交点ぴったりでなくとも重なる=月食は起こります。
- 満月(望)となるのが交点に近ければ皆既月食、遠ければ部分月食が起こります。
- つまり、どのような月食が見られるか、すなわち月がどの程度本影に隠れるかという問題は、交点からどれだけ近いところで満月(望)となるかという問題に置き換えることができます。
月食の限界†
- 日食の場合と比較すると、地球の本影の視半径は太陽の視半径よりも大きいですから、月食のほうが交点から離れていてもよいと思うかもしれません。
- しかし、月食の場合、月が地球の陰に隠れるという事象に対して、自分がどこにいるかはまったく影響を与えません。
- 月さえ見えていれば、地球上のどこから見ても同じように月食は進行していきます。
- 月も地球に近いですが地球の影も近く、月と同じようにずれて見えるので、相対的な位置関係は変わりません。
- 一方、月食が起きているとき、月から見れば地球が太陽を隠す=地球による日食が起きています。
- 影を考えるのは少し厄介なので、月から見て日食が起こる条件を考えてみましょう。
- 地球の半径は月の約4倍ですから視半径は約1°、逆に、月の端と月の中心で地球がどれだけずれて見えるか=地球の視差は約0.25°≒地球約1/4個分となります。
- 月面で部分日食が見られる条件
- 月の南端から見ると地球は0.25°ほど北にずれて見えますから、地球の視半径+視差+太陽の視半径≒1.5°ほど離れていても、月の南端では地球と太陽が重なり部分日食が見られます。
- このときの交点からの距離は約17°で、これより離れると月から日食は見られなくなります。
- 月面上で部分日食ということは太陽の光がまだ一部届いており、その場所は少し暗くなるだけです。地球から見れば月食に気づかないくらいで、この状態は半影月食と呼ばれます。
- つまり、月から部分日食が見られる条件=地球から半影月食が見られる条件は、交点の両側約17°以内で満月(望)となることです。
- 月面で皆既日食が見られる条件
- 月の南端から見ると地球は0.25°ほど北にずれて見えますから、地球の視半径+視差−太陽の視半径≒1°ほど離れていても、月の南端では地球が太陽を覆い尽くし皆既日食が見られます。
- このとき交点からの距離は約11°です。
- 月面上で皆既日食ということは太陽の光は届かないので、その場所はほぼ真っ暗になります。地球から見ればそこは暗く、他は明るく見える=部分月食となります。
- つまり、月から皆既日食が見られる条件=地球から部分月食が見られる条件は、交点の両側約11°以内で満月(望)となることです。
- 月面全体で皆既日食が見られる条件
- さらに月の北端からでも皆既日食が見られるようになるには、地球の視半径−視差−太陽の視半径≒0.5°ほどまで近づかないといけません。
- このとき交点からの距離は約6°です。
- 月のどこからでも皆既日食=月面全体が暗い=地球から見たら皆既月食となります。
- つまり、月のどこからでも皆既日食が見られる条件=地球から皆既月食が見られる条件は、交点の両側約6°以内で満月(望)となることです。
日食と月食はどちらが多い?†
- 日食限界と月食限界を比較すると以下のようになります。
- 半影月食が見られる条件〜部分日食が見られる条件〜交点から約17°
- 部分月食が見られる条件〜皆既・金環日食が見られる条件〜交点から約11°
- 皆既月食が見られる条件〜交点から約6°
- 通常半影月食は月食にカウントしませんから、月食のほうが条件が厳しいことがわかります。
- このため、日食は年に最低2回はありますが、月食は0回=半影月食のみということがありえます。
- 半影月食も含めれば、日食と月食の数はほぼ同じです。
- 貞享改暦の際に暦に月食とあるのに月食が起こらなかったといっているのは、いづれも半影月食です。
- にもかかわらず、月食のほうが多いように感じると思います。
- 日食は見られる範囲が限られるので、特定の地域で見られる可能性は低くなります。
- これに対し、月食は月さえ見えればよいので、毎回世界の半分以上の地域で見ることができるからです。
- 日食の周期も、観測頻度の高い月食の周期から割り出されたと考えられます。
日食と月食の関係†
- 新月(朔)と満月(望)の間隔は月の満ち欠けの半分≒約15日です。
- あるとき日食が起こったとすると、その15日前あるいは15日後も太陽は交点の近くにいるので月食が起こります。このため、日食と月食は必ずセットで起こることになります。
- 1朔望月の間に2回部分日食が起こるときは、その中間の満月(望)では太陽は交点のすぐ側にいます。したがって、食の深い皆既月食が起こります。
- 部分月食が起こるときは皆既または金環日食も必ず起こります。
関連ページ†
Last-modified: 2021-08-24 (火) 14:46:17