暦Wiki
うるう秒がなくなる?†
うるう秒をめぐる議論†
- うるう秒の問題点
- 時刻が不連続になります。
- 商取引や座席予約のような場面では1分1秒を争いますから、うるう秒の取り扱いが明暗を分ける可能性もあります。
- 生活基盤を担うシステムで混乱が発生すれば、深刻な事態になることも考えられます。
- 過去のデータを精密に扱う際には、いつうるう秒が挿入されたか考慮する必要があります。
- 地球の自転は不規則に変動するため、うるう秒がいつ入るか短期的にも長期的にも予測できません。
- その都度人手を介して対応せざるを得ず、ヒューマンエラーというリスクにつながります。
- OSにせよソフトウェアにせよ日進月歩で進化していきます。毎年うるう秒があればまだよいのですが、数年おきとなると対応を忘れがちになります。
- まして負のうるう秒はこれまで一度もなかった事態ですから、どんなトラブルが発生するか予測困難です。
- 長期的には地球の自転は減速する一方であり、うるう秒挿入の頻度は加速度的に増大します。
- こうした問題をふまえ、うるう秒の是非について議論が進められてきました。
- うるう秒がないと、
- 太陽が昇ろうが昇るまいが、ひたすら時計の針にあわせて生活することになります。
- 地球の自転の方が遅いので、日の出や日の入りは次第に遅くなっていきます。
- 自然に夏時刻な方向へ向かいます。
- いずれ昼の12時になっても日が昇らない事態も起こりますが、遠い未来の話です。
- 望遠鏡を天体に向けるとき、星の位置から自分の位置を割り出したいときなどには、時計の針と地球の針のずれを別途知る必要があります。
- うるう秒を前提とする既存システムやソフトウェア等は改修が必要かもしれません。
- うるう秒の代わりに、
- うるう分やうるう時間?
- うるう分なら100年で1-2回程度、負のうるうが入る可能性もなくなり、挿入のタイミングも数年前から計画できます。
- うるうの挿入が遠い未来の出来事となり、プログラマーはうるうの存在を忘れ、オペレーターはうるうの入れ方を忘れます。
- UT1-UTC<±0.9秒を前提とするシステムでは適切に扱えない可能性があります。
- 標準時の変更で対応?
- 協定世界時は連続なまま。標準時の変更は夏時刻利用国にとってはお手のものです。
- 各国が標準時を一斉に変えたり、末端のシステムまですべて追随させたりするのは困難です。
- 現在の1日の長さに対応するよう、1秒の長さを変える?
- 現状でも、
- GPS時刻のように、うるう秒を使わない時刻系を利用することも可能です。
- 一定期間だけ秒の長さに調整を加え、少しずつ時刻をずらしていくSmearingという方法もあります。
- しかし、個別にバラバラな対応をしていては、さまざまな時刻が乱立して新たな混乱を招く懸念があります。
- IAUのUTC作業部会でもうるう秒廃止については意見がまとまらず (IERS )、
- 廃止については、賛成も反対もできない。
- 廃止なら、地球の自転とリンクする"Universal Time"(世界時)という名称を使うべきではない。
- 廃止なら、対応のため、最低5年の猶予を設けること。
舞台は国際電気通信連合†
- これらに関する国際的な取り決めは、国際電気通信連合 無線通信部門 (ITU-R ) で議論されます。
- しかし、10年以上かけても作業部会での議論はまとまらず、2012年1月の無線通信総会(RA-12)で投票にかけられることになりました。
- ところが、この総会でも賛成・反対の溝は埋まらず、事情がよくわからないとして意見を保留する国も多数出たため差し戻しとなり、2015年の世界無線通信会議(WRC-15)に持ち越されることになりました。
- WRC-12 Resolution 653
- 2015年11月のWRC-15でも、複数案が提示されています。
- Method A1:うるう秒を入れない協定世界時 (名称は変更しない)
- 影響を受けるシステムのために最低5年の猶予を設ける。今後もIERSがUT1-UTCを提供する。日本政府としてはこれを支持しています。
- (利点) 時刻が連続になる。うるう秒挿入に伴うコストとリスクがなくなる。複数の時刻系併用による混乱を避けられる。1972年に周波数方式からうるう秒方式に変更したときも名称はそのまま、今回も変えないほうが混乱が少ない。
- (欠点) UT1-UTCは次第に増加するので、影響を受けるシステムは改修あるいは定期的なメンテナンスが必要になり、それに伴うコストとリスクが発生する。名称が同じだとどちらの時刻かわからなくなる。各種説明には変更が必要。
- Method A2:うるう秒を入れない協定世界時 (ただし、名称は変更する)
- (利点) A1とほぼ同じだが、名称変更によりどの時刻系を使っているかが明確になる。
- (欠点) 同一名称による混乱を除き、A1とほぼ同じ。
- Method B:うるう秒継続、今の協定世界時を維持。国際原子時にもとづく連続的な時刻系を新設・併用する。
- (利点) 既存システムの改修が不要。必要に応じて時刻系を選択できる。
- (欠点) うるう秒挿入に伴うコストとリスクは継続。2つの時刻系を併用するため、時刻システムの改修に伴うコストとリスクが発生する。何がどの時刻系を使っているか、異なる時刻系を使うもの間のやりとりなどに注意が必要で、混乱が危惧される。
- Method C1:うるう秒継続、今の協定世界時を維持。連続的な時刻系には国際原子時を用いる。
- UTC-TAIの情報も時刻シグナルに載せ、必要に応じて連続的な時刻系が使えるようにする。
- (利点) 既存システムの改修が不要。連続的な時刻系を使うことも可能。
- (欠点) うるう秒挿入に伴うコストとリスクは継続。
- Method C2:うるう秒継続、今の協定世界時を維持。国際原子時以外の連続的な時刻系も加える。
- (利点) C1と同じ
- (欠点) C1と同じ。複数の時刻系併用に伴う混乱が危惧される。
- Method D:結論がでないので、何も変更しない。
- (利点) 既存システムの改修が不要。
- (欠点) うるう秒挿入に伴うコストとリスクは継続。
- 2015-11-19 結局、うるう秒や協定世界時といった現在のシステムは変更せず、現在及び将来の時刻系について更なる研究を行い、2023年の世界無線通信会議(WRC-23)に提案することになりました。
議論は国際度量衡総会主導へ†
- 2018-11 第26回CGPM勧告2 (BIPM ):TAIとUTCの定義を再確認。
- 2020-06 Memorandum of Understanding (BIPM ):BIPMとITUがUTC関連の相互協力協定を締結。
- 2022-10 ITU-Rによる研究報告書 (TF.2511-0 )
- 2022-11 第27回CGPM決議4 (BIPM )
- 2035年までにUT1-UTCの許容値を0.9秒から引き上げる。
- ITU等の関連機関とも協議のうえ、新しい許容値は少なくとも1世紀間UTCの調整が不要となるよう定める。
- 2023-11 世界無線通信会議 (WRC-23 )
- 2035年までに協定世界時を事実上の時刻標準として採用するというBIPMの決定を支持する。ただし、現行機器の交換が間に合わない場合は期限を2040年に延長する可能性もある。(ITU )
- 許容値や適用年については、2026年のCGPMに向けて準備が進められるようです (BIPM )。
関連ページ†
Last-modified: 2023-12-18 (月) 16:21:56